タベサクの食レポブログ!

日本(と時々海外)で印象的だったお店の料理を主観全開でレポートします。うん万円する鉄板焼き料理から、メイド喫茶の魔法がかかったスイーツまで!

食レポ#034 お手頃な価格で本格ディナーを!マテーラで出会った洞窟のレストラン"マテーラ Osteria Pico"[1stイタリア編 その4]

わざわざ海外から買いつけに来るほど評判のマテーラのパン!本格的なイタリアンをリーズナブルな価格で頂ける"Osteria Pico"

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マテーラの中心街をぐるりと一周してから一旦ホテルに戻り、夕飯のお店を検討する事に。兼ねてからチェックしていたトリップアドバイザーの情報によると、ホテルからわりと近いところにマテーラの中でも上位の人気レストランがあるらしい。混雑していないかやや不安だったが、予約もなしに行ってみる事にした。幸い夜早め(19時前くらい)に行ったこともあってか、並ばずに入る事ができた。

フィオレンティーニ通り沿いにある"Osteria Pico"は、マテーラにある多くの住居やお店と同じく洞窟をくり抜いたサッシと呼ばれるスタイルの内装で、1階に入り口があり奥に進むほど地下に下っていくという構造になっている。店名にもある"オステリア"とは、イタリアの飲食店の種類の一つであり、カジュアルな居酒屋、と定義されている。よく耳にする"リストランテ"は比較的高級なレストランの事を指し、お店の名前でレストランの価格帯や品揃えを推し量る事ができる。

 

イタリアのレストランの文化にならって、前菜であるAntipasto(アンティパスト)を1品、第一の皿と言われるPrimo Piatto(プリモ・ピアット)としてパスタ料理を1品、第二の皿と言われるSecondo Piatto(セコンド・ピアット)としてメインの肉料理を1品注文した。

 

前菜の前に、炭酸水(炭酸抜きも選べる)とパンが自動的に出されるのだが、この突き出しのパンが既に度肝を抜くほどウマい。マテーラは天然酵母で作られたパンが美味しい事で有名だとは聞いていたが、ここまでしっかりと味のついたパンを食べたのは初めてだ。マテーラのパンは、スライスする前の状態はまるで岩のようにゴツゴツとしている(この個性的な見た目のため、入り口に裸の状態でドカンとパンを置いているベーカリーも散見できた)。パンの内側に旨味を閉じ込めるため、表面の耳はガリガリと言えるほど固めなのだが、そのギャップも相まって中は綿を食べているかのような、フワフワの食感だ。一口目はフワッとしているが、噛んでいくごとに唾液の水分と相まってモチモチとした食感へと変化し、パンの旨味が口内に染み渡る。このパンを使えば、サンドイッチやパニーノのポテンシャルは間違いなく高まるに違いない。

 

続いて注目すべきはPrimo Piatto(プリモ・ピアット=第一の皿)のパスタである。マテーラの人気パスタは一般的な麺状ではなく、"ストロッツァプレーティ"というねじったショートパスタを使っている。日本語に訳すと「神父を絞め殺す」という物騒極まりない名前だが、しっかりとした噛み応えと弾力があり大変美味だ。私は事前にガイドブック等でこのパスタの存在を知っており、珍しい形で是非食べてみたいと思っていたあこがれの料理だった。モチモチ、いやギチギチとした密度の高いパスタは小麦の風味が強く、濃いめに味付けされたクリームチーズ風味のソースとの相性は抜群だ!

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メインディッシュのSecondo Piatto(セコンド・ピアット=第二の皿)は煮込み料理で、肉はなんと猪を使っている。そもそも猪の肉を食べる事自体初めてなのか、上手に煮込まれているためかとても柔らかい。肉の繊維がホロホロとほどけていく感覚で、なおかつ内部までソースの味がしっかりと染み渡っている。一緒に煮込まれたポルチーニも絶品だ。

 

"Osteria Pico"は、価格はオステリア並みにリーズナブルでありながら、味や食器はリストランテ並みに優雅で絶品である。味・価格・お店の雰囲気、あらゆる面で行く価値のあるお店だと思う。

 

夕食を食べ終え店を出る頃には、あたりはすっかり真っ暗になっていた。マテーラの真骨頂は夜の景色で、街全体が無数の明かりでライトアップされている。これが生涯記憶に残り続けるくらい最高に美しい夜景なのだ!洞窟住居一軒一軒に黄色と白の明かりが無数に散りばめられ、街全体が昼と全く違う表情になる。旅行代理店のパンフレットなどでマテーラが紹介されているとしたら、恐らくこの夜景の写真が掲載されているかと思う。それくらい神秘的で美しいからなのだが、これは是非自分の目で本物の夜景を見て欲しい!

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ホテルへ戻り、お互い疲れが溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。数時間後、外から聞こえてくるかすかな楽器の音と歓声のような声に目がさめる。せっかくなので、夜のマテーラを散策するために一人でホテルを出る。思い出した。今マテーラは音楽祭が開催されているのだ!昼間通った市街はライトアップされた飾り付けで彩られており、建設中だった特設ステージではオーケストラがクラッシック音楽を披露していた!夜間にもかかわらず広場は観衆で埋め尽くされていて、異様な熱気を放っていた。全くの偶然であったが、このタイミングでマテーラを訪れたのは本当に奇跡である。

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時間にしてわずか30時間ほどしかいなかったマテーラだったが、そこで見たもの・食べたもの・触れたものは今でも記憶の中にはっきり残っている。まさに夢の世界にいるような、幻想的で素敵な時間だった。